2022年7月31日日曜日

コピペ 文春オンライン 《スクープ映像入手》旧統一教会のフロント組織「勝共連合」会長が安倍元首相との“ビデオ出演”交渉の裏話を激白

「朝鮮半島の平和的統一に向けて努力されてきた韓鶴子(ハン・ハクチヤ)総裁をはじめ、皆様に敬意を表します」

 旧統一教会(現・世界平和統一家庭連合)のフロント組織UPF(天宙平和連合)主催の「神統一韓国のためのTHINK TANK 2022希望前進大会」で、安倍晋三元首相(享年67)がおこなった基調講演(ビデオメッセージ)。安倍氏は冒頭のように発言し、旧統一教会トップの韓鶴子を持ち上げて見せた。

 今年4月、この「ビデオメッセージ」を見たのが山上徹也容疑者だ。この安倍氏の姿を見て、「殺すしかない」と暗殺の決意を固めたと供述している。

 今回、筆者が入手した映像は、2021年10月17日に統一教会松濤本部・渋谷教会で行われた梶栗(かじくり)正義・UPF-Japan議長・国際勝共連合会長による日曜礼拝の説教「神のかたち」を収めたものだ。この映像の中で梶栗氏は、ひと月前の9月12日に韓国で開かれた「希望前進大会」に安倍氏がビデオ登壇した裏側を明かしていた。

梶栗氏の説教映像「元首相3人へもオファーした」

 説教の冒頭、「去る9月12日の希望前進大会においてとんでもないサプライズがあった」と切り出した梶栗氏。彼は統一教会や国際勝共連合の会長を歴任した故梶栗玄太郎氏の長男で、UPF-Japan議長の他、国際勝共連合や世界平和連合の会長を兼任するエリート2世幹部だ。

 

「実際に9月12日以降、私たちは今後の信頼関係を守るためにいろいろと気を遣うのですが……」としながら、梶栗氏は本題に入った。

 昨年夏ころ、各国首脳クラスのブッキングが決まる中、梶栗氏は日本からの登壇者が中々決まらずストレスを感じていたとしてこう明かす。

「私とてアプローチをいくつかしておりまして、その難しさをずっとお伝え申し上げている。ただ、決まらないものだから、どういうトーンになってくるかというと、日本においてそれを成すことがいかに難しいかという言い訳じみた報告になっているわけですよ」

 元首相3人へのオファーしたものの、そのうちのひとつの事務所からはこう告げられたという。

「宗教団体のフロント組織でしょ?」

「結局あなたたちはわたくしどもの先生を宣伝材料に使いたいだけでしょ? 利用したいだけでしょ? あなたたちに利することがあって私どもの先生に利することはいったい何があるんですか? UPFと言ったってそんなのは家庭連合・宗教団体のフロント組織でしょ?」

 フロント組織を隠れ蓑に政治家を広告塔として布教活動に利用してきた旧統一教会に対する厳しい批判だが、このことを梶栗氏が教団幹部に告げたところ、その幹部から返ってきたのは、「実際その通りだしな」という言葉だったと明かしている。

 けっきょく3人の元首相からは断られたものの、世界宣教本部の尹(ユン)ヨンホ本部長から、トランプ前大統領の出演が決まったことを告げられたうえで、「例の取り組み」を始めるよう指示される。その「例の取り組み」こそ、安倍氏のブッキングだった。

 梶栗氏は、安倍氏との間に「ずっと温めてきた信頼関係」があると誇ってみせる。実は昨年春、安倍氏との間でこんなやりとりをしていたという。

 梶栗「これ先生、もしトランプがやるということになったら、やっていただかなくちゃいけないが、どうか」

 安倍「ああ、それなら自分も出なくちゃいけない」

 梶栗氏は、韓総裁に手紙でこのやり取りを伝えていたため、尹本部長から指示されたのだ。梶栗氏は再度説得に動き、8月末に安倍事務所から「やりましょう」との承諾を得た。そして撮影は9月7日に決まる。

 元首相をブッキングした梶栗氏の自慢話は止まらない。

「あの皆さん、(安倍氏が講演で)語られた内容、覚えてますか? 本当に立派な内容を語られたんですよ。そこでね、言わんとされているのは、本当に私(安倍氏)が信頼し、ともに日本の再建のために信頼して一緒にできる団体はどこか、というね。こういう角度から私たちに対する信頼を深めてきたと」

 そして梶栗氏は、安倍氏との信頼関係は「一朝一夕の話ではない」と強調して、自分がビデオ撮影のあと安倍氏を見送る際に見た「霊界の後押し」について語り始めた。

「8年弱の政権下、6度の国政選挙で……」

「(撮影が)終りまして、玄関からお送りするときに、私は深々と頭を下げました。本当にありがとうございましたと。ところがね、私の横に梶栗玄太郎と久保木修己(統一教会・国際勝共連合、初代会長)が一緒に頭を下げているんです。あ、いつの間にいたんだという感じで。

 そしたら、先方も深々と頭を下げているんです。その横に岸(信介)先生と安倍晋太郎先生がね、深々と頭を下げているんです。もう私は鳥肌もんだったです。過去、現在、未来という時世が編み上げられた形で、奇跡的な瞬間は実現しました」

 その光景を斜め上から故文鮮明氏が見守っていたという。

「お父様(文鮮明氏)が腕を組んでニッコニコニコニコされてんですよ。もう私もね、鳥肌もんだったんです」

「この8年弱の政権下にあって6度の国政選挙において私たちが示した誠意というものも、ちゃんと本人(安倍氏)が記憶していた。こういう背景がございました」

 教団のトップは、表向き事件後に会見を開いた田中富広会長とされているが、筆者は最高幹部2世である梶栗氏が実質的なトップとみている。安倍元首相が暗殺されるきっかけとなったビデオメッセージの依頼主だと梶栗氏が認めていたことは少なくない波紋を呼びそうだ。

 鈴木氏によるさらに詳しいレポートは、梶栗氏の約20分にわたる ロング・バージョン映像 とともに「文藝春秋digital」に公開中だ。

 また、8月10日発売の「文藝春秋」9月号には、安倍元首相と統一教会との本当の関係を徹底究明したジャーナリスト森健氏と本誌取材班による深層レポートが掲載される。

(鈴木 エイト/文藝春秋)


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