2021年12月24日金曜日

コピペ 田原総一朗「森友裁判終結は忖度の極み ジャーナリズムは対峙せよ」 .

 国による一方的な打ち切りともとれる森友裁判の終結。ジャーナリストの田原総一朗氏は、ジャーナリズムのあり方を問いかける。

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 森友学園への国有地売却をめぐる財務省の公文書改ざん問題が思わぬ"決着"をした。

 改ざんを強いられ、自殺した近畿財務局職員の赤木俊夫さんの妻・雅子さんが国に損害賠償を求めていたが、15日に国側が雅子さん側の請求を受け入れ、終結したのだ。これまで国側は、請求の棄却を求めていたのだが、一転して賠償責任を認めたのである。

 それに対して雅子さんは、「お金を払えば済む問題ではない。悔しい」と怒りをあらわにしている。

「なぜ夫が亡くなったのかを知りたいと思って起こした裁判。夫にどう報告しようか悩んでいる。こんな形で裁判が終わってしまって、悔しくてしょうがない」

 代理人を務める生越照幸弁護士も、「改ざん問題が追及されることを避けるため、訴訟を終わらせた」と国側の対応を批判した。

 財務省は2018年に調査報告書を公表しているが、改ざんを指示した文言や、近畿財務局職員らがどのように反発したのかなどは記されておらず、雅子さんは、岸田文雄首相に改ざん問題の再調査を求めたが、岸田首相は「必要ない」としていた。

 実は私は、安倍晋三内閣時代に、政策についてはいろいろ提言し、私が同意できない政策はほとんどなかったのだが、安倍内閣の森友・加計疑惑について、ほとんど関心を持たず、取材をしなかった。そのことを後悔している。

 小選挙区制になり、小泉純一郎内閣の時代からいわゆる金銭スキャンダルはほとんどなくなっていたからだ。

 その後、桜を見る会の問題を共産党が暴いたとき、私は「これは税金の私物化であり、とんでもないスキャンダルだ」と捉え、そのことを当時官房長官であった菅義偉氏に厳しくただした。

 かつての自民党ならば、安倍首相が自分の後援会の人間たちを桜を見る会に送り込んだら、実力者が「安倍さん、やめなさい」と言ったはずだ。安倍さんは素直な人間だから、言われればやめたはずだ。だが、どの実力者も忠告せず、自分たちの後援会の人間たちをどんどん桜を見る会に送り込んだ。

「自民党の国会議員たちの神経がたるみきっている。なぜこうなったのだ」と問うと菅氏は、「弁解も反論もできない。野党が弱すぎるのと、小選挙区制になって、自民党の国会議員たちがみんな安倍さんのイエスマンになってしまったのだ」などと答えた。

 日本の政治の最大の問題は、政界に緊張感がないことだ。

 野党を強くしなければならないのは当然だが、その前にジャーナリズムにできることがあるはずだ。

 今回の森友裁判終結はむちゃくちゃだ。一方的に打ち切って、検察も官僚も真相解明の機会を閉ざした。これは忖度(そんたく)の集大成だろう。

 河井克行元法相と案里夫妻の金銭スキャンダルも、忖度では同じ構図だ。検察は河井夫妻を起訴したが、彼らは協力者である。もっと深いところに裁かれるべき者がいるはずだが、検察は自民党本部に対しては何もしていない。猫を追うより皿を引かねばならないのではないか。

 何を隠しているのか。もっとマスコミが追及しなければならないはずである。ジャーナリズムが権力にも検察にも容赦なく立ち向かわなければならないのだ。

田原総一朗(たはら・そういちろう)/1934年生まれ。ジャーナリスト。東京12チャンネルを経て77年にフリーに。司会を務める「朝まで生テレビ!」は放送30年を超えた。『トランプ大統領で「戦後」は終わる』(角川新書)など著書多数

※週刊朝日  2021年12月31日号


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