2021年12月26日日曜日

コピペ 岸田文雄総理の息子も橋本聖子氏の娘も…“日大のドン”が自慢する新入生と、知られざる政界とのつながり 文春オンライン

 アメフトの悪質タックル問題が表面化する直前の2018年5月上旬。ある会合で、日大の"ドン"は、誇らしげにこう語っていた。

「日本大学は日本一の大学です。今年は岸田文雄外務大臣(注・実際は前年に外相退任)の息子が入学しましたし、来年は自民党の橋本聖子さんの娘が入ります」

 東京地検に脱税容疑で逮捕された田中英寿前理事長(75)。彼が頼った"伏魔殿の生命線"は、知られざる政界とのパイプだった。

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まだ田中色一掃とは言い難い

 司法担当記者が語る。

「逮捕後の家宅捜索では、田中氏の妻が経営するちゃんこ店の女性従業員が住む築41年の木造アパートから現金2000万円が発見された。他に、日大相撲部ОBで田中氏が会長を務める国際相撲連盟の会計に関わっていた日大職員の自宅にも家宅捜索が入った。彼が管理していた国際相撲連盟の田中氏名義の口座からはすでに金が引き出されていたそうです。特捜部は大学の理事長室からも7000万円を押収。さらに脱税額を積み上げ、田中氏を確実に実刑に持ち込みたい意向です」

 拘置所での田中氏は持病のせいで生活に不自由があるものの、食欲は旺盛。脱税容疑については否認を貫いているという。

「田中氏は理事長を辞任し、12月3日の理事会で理事も解任されました。ただ、33人中6人の理事は解任決議に反対票を投じており、まだ田中色一掃とは言い難い」(日大関係者)

後任の理事長候補は?

 一方、ポスト田中を巡る動きは政界にも及んでいる。

「日大医学部出身で、先日政界を引退した鴨下一郎元環境相を次の理事長にという声があります。推す一人が日大OBで菅義偉前首相の側近の星野剛士衆院議員で、彼も理事の候補と目されている」(永田町関係者)

 その星野議員が語る。

「今回の事件は日大板橋病院が舞台だっただけに、医学部出身で、日大関係者にも人望がある鴨下先生は理事長に適任だと思います。私も、もし母校のために何か出来ることがあるなら、汗をかくつもりでいます」

 鴨下氏以外に、日大OBで、一時は大学の理事を務めた古賀誠元自民党幹事長も田中氏の後任理事長候補に名前が挙がっている。

 日大では、出身者が地域や職域などで個別に「桜門会」というОB組織を全国に作っているが、政治家も例外ではない。自民党関係者が語る。

「自民党にも桜門会があり、20人弱の日大OB議員が年に1回、中華料理店などで田中氏や学長、日大幹部などと長らく懇親会を行なっていました」

 メンバーには林幹雄前幹事長代理や、佐藤勉前総務会長、梶山弘志前経産相など錚々たる顔触れが並んだ。

 ただ、それもここ5年ほどは行なわれていなかった。発端は会食の日程調整だった。田中氏は事務局的な役割だった中川俊直議員(当時)らを理事長室に呼びつけた。だが、彼らの顔も見ようとせず、無言でテレビを観ていたという。

田中氏の失礼な態度に中川氏は…

「『お座り下さい』の一言もなく、立たせたまま、大相撲を観ていたそうです。陣笠議員など相手にしないと言わんばかりの対応に、中川氏らは怒って5分ほどで部屋を後にした。元々会食の席でも、田中氏は仏頂面でほとんど喋らない。そんな失礼な態度もあって、約5年前に定期的な会食は取り止めになった」(同前)

 しかし、この一件で日大と自民党のパイプが切れた訳ではない。日大では、田中氏が理事長に就任した08年から学識経験のある学外理事のなかに、常に"政治家枠"を設けてきた。

「最初の3年は古賀氏、そして政権交代で09年に自民党が野に下ると、当時民主党の実力者だった小沢一郎氏を理事に選出。12年に自民党が政権を奪還すると、小沢氏を残して今度は鴨下氏を理事に据えました。直近では前選対委員長の山口泰明氏が理事を務めていました。こうして、常に政権与党で枢要な位置にいる日大出身議員を理事に迎え入れて来たのです」(同前)

 田中氏の華麗な政界人脈を見せつけたのが、日大130周年記念を巡る二つのイベントである。

「周年事業の目玉として、前から近しい亀井静香元運輸相の尽力で危機管理学部を創設。16年春の開校祝賀会には亀井氏や文教族のドン、森喜朗元首相が姿をみせました」(日大元幹部)

田中氏の目配りは政治家の子弟にも

 JОC副会長でもあった田中氏は、東京五輪招致を牽引した森氏との関係を誇示するように、当時から「招致資金の一部は自分が出した」と周囲に豪語した。

「田中氏の最高の栄誉となるはずだった130周年記念式典は、19年10月に行なわれました。アメフト問題で日大の権威が失墜する中、国会開会日にもかかわらず、麻生太郎財務相や山東昭子参院議長が駆け付けた」(前出・日大元幹部)

 田中氏の目配りは政治家の子弟にも及んでいた。それが冒頭の発言だ。

「岸田氏の次男は新設のスポーツ科学部を来春卒業してスポーツ関連会社に就職予定。橋本氏の三女は日大の準付属高校から学校推薦でスポーツ科学部に入学し、今も在学中です」(同前)

 田中氏には政治もまた、権力の道具に過ぎなかった。

(西﨑 伸彦/週刊文春 2021年12月16日号)

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